ぼうれいふたり こばやしぺれこ
「AKIRA読んだことある?」「アニメはある」
「へえ」「ある?」
「ない」「おもしろいよ」
「そっか」「あのさ」
「うん」「この向こう、前なにあったか覚えてる?」
「なんかあったよね」「なんかしらはね」
「うーん」「うん」
「スタバあったよね」「あれね。ホテルの眼の前で便利だったのにね」
「あと細い道」「あれも便利だったのにね」
「ね」「ね」
「大体そうだよね」「なにが」
「毎日通る場所でもさ、工事始まったりするとなにあったのかわかんなくなる」
「うん」
「たまにしか来ないもん。わからんよ」「そうね」
「いろいろと行ったけどさ」「二人でね」
「たまに一人で」「たまにね」
「行った場所は覚えてるし、なにしたかは覚えてるんだけど」「うん」
「細かいとことか、いつ行ったかとか忘れてるんだよね」「うん、そらね」
「なんかこう、亡霊が立ってるみたいな」「うん?」
「渋谷のさ、行ったことある場所にいるんだよ」「なにが」
「私とあなたの、思い出がさ」「いるの?」
「いるの。思い出の中のふたりがさ」「いるのか」
「うん。こう、ぼんやり立ってる」「あの時の格好で?」
「そうそう。でも前後が思い出せないから、立ってるだけなの」「亡霊だね」
「そう亡霊。色んなとこにいるよ」「他の人は?」
「私の思い出だから、いないよ」「いないのか」
「うん」「今も?」
「今も?」「いや、今の私らも亡霊になってるのかなって」
「ああ。なってると思う」「刻々と」
「こくこくと」「そう」
「刻々とね、なってるよ」「なってるか」
「亡霊が歩いてるよ」「ふふ」
「あそこ?」「ああ、そこそこ。おいしいらしいよ」
「おなかすいたねー」「ねー」
こばやしぺれこ
作家になりたいインコ好き。好きなジャンルはSF(すこしふしぎ)
前回の企画で台詞だけのお話を読み、いいなぁと思ったので真似してみました。
渋谷は年に何回か行くので、思ったことをそのまま書いてみました。
東京に行く時はだいたい同じ人と行くので、イマジナリーその人との会話のような感じです。
こんな会話をしたことあるような気もするし、やはりイマジナリーその人との妄想だったような気もします。
亡霊の話はしたことないです。
ここまで書いてお題に写っていたAKIRAの壁が渋谷ではなかったらどうしようかと思いましたが、その時は指さして笑ってください。